「リードの数を増やす」のではなく「狙った企業だけを攻略する」という発想で新規開拓を行うのがABM(アカウントベースドマーケティング)だ。テレアポやDMで幅広くアプローチする手法とは対照的なこのアプローチと、営業代行はどう組み合わせられるのか。
ABMとは何か
ABM(Account Based Marketing)は、不特定多数にアプローチするのではなく、自社にとって価値の高い企業(アカウント)をあらかじめ絞り込み、その企業に対して集中的にマーケティング・営業活動を行う手法だ。
- 幅広いリードを獲得してから絞り込む「リードジェネレーション型」とは逆のアプローチ
- ターゲット企業を先に決め、その企業の複数の関係者に対して個別最適化したアプローチを行う
- 契約金額が大きく、意思決定に複数の関係者が関わるエンタープライズ商材と相性が良い
なぜABMが有効な場面があるのか
一般的な新規開拓は「数を打てば当たる」という考え方に近いが、契約金額が大きく、決裁プロセスが複雑な商材では、この考え方が機能しにくい。数百件にアプローチしても、本当に価値のある大口顧客はごく一部だからだ。
ABMは、この「価値の高い少数の企業」に対してリソースを集中投下する発想だ。1社あたりにかける工数は増えるが、成約した際のインパクトが大きいため、投資対効果が見合いやすい。
ABMと営業代行の役割分担
ABMを実践する際、すべてを自社で完結させる必要はない。
- ターゲット企業の選定:自社の戦略に基づくため、基本的には自社で行う
- ターゲット企業内の複数の関係者へのアプローチ:営業代行(インサイドセールス)が架電・アプローチを担う
- 個別提案の作成・商談:フィールドセールスが対応する
- 既存の取引実績があるアカウントへの深耕:カスタマーサクセスが並行して担う
つまりABMは、The Modelの各フェーズを「特定のターゲット企業に絞って集中的に実行する」という運用の仕方と捉えることができる。
ABM実践における営業代行活用のポイント
ABMを営業代行と組み合わせる際は、通常の新規開拓とは異なる依頼の仕方が必要になる。
- ターゲット企業のリストを自社側であらかじめ絞り込んで渡す(代行会社にリスト作成を任せる一般的な新規開拓とは異なる)
- 1社に対して複数の部署・複数の役職者にアプローチする設計を共有する
- 架電の成果を「アポ数」ではなく「ターゲット企業内での接点の広がり」として評価する
一般的な成果報酬型の契約(1アポあたり◯円)は、ABMの評価軸とは相性が悪い場合がある。ABMを委託する際は、固定報酬型や、独自のKPI設計を組み合わせた契約形態を検討したい。
ポイント:ABMは「アポの数」ではなく「狙った企業内でどれだけ関係を築けたか」を評価軸にする必要がある。営業代行への依頼内容・料金体系も、この評価軸に合わせて設計したい。
ABMが向いていない場面
ABMはすべての企業に適した手法ではない。単価が低く、幅広い顧客層にアプローチする商材では、少数の企業に集中投下するABMのメリットが活きにくい。自社の商材の特性(契約金額、決裁プロセスの複雑さ)を踏まえて、ABMと従来型の新規開拓のどちらが適しているかを見極める必要がある。
よくある質問
Q. ABMはBtoCでも使える手法ですか? A. ABMは基本的にBtoB、特にエンタープライズ向けの商材で用いられる手法です。BtoCでは個人単位のターゲティングになるため、別の考え方が必要になります。
Q. ABMを始めるにはどのくらいのターゲット企業数が適切ですか? A. 明確な基準はありませんが、集中投下できる範囲として数十社程度から始める会社が多い印象です。
Q. ABMの成果はどう測定すればよいですか? A. 単純なアポ数ではなく、ターゲット企業内での接点数(何人の関係者と接触できたか)や、案件化した企業の割合で測定するのが実態に即しています。
Q. 営業代行にABMを依頼する際、注意すべき点は何ですか? A. 一般的な成果報酬型の契約がABMの評価軸と合わないことがあるため、固定報酬型や独自のKPI設計を組み合わせるなど、契約形態を工夫する必要があります。
ABMは、幅広く網を張る新規開拓とは発想が異なる手法だ。自社の商材特性を踏まえ、営業代行の活用方法もABMに合わせて設計し直す視点を持ちたい。