「営業代行と正社員採用、結局どちらが安いのか」——この問いに単純な答えはない。表面上の金額だけを比較すると営業代行の方が高く見えることもあるが、採用・育成にかかる隠れたコストまで含めて計算すると、結論が変わることも多い。本記事では、コストという観点に絞って、内製営業と営業代行を比較する。

表面上の金額だけで比較してはいけない理由

営業代行の月額費用(固定報酬型で1名あたり月50〜70万円程度)だけを見ると、正社員の月給と比べて割高に感じるかもしれない。しかし、正社員1人を雇用するコストは、給与だけでは終わらない。

  • 求人媒体への出稿費、人材紹介会社への成功報酬
  • 採用担当者の工数(面接・選考にかかる社内リソース)
  • 入社後の研修・OJTにかかる期間中の生産性の低さ
  • 社会保険料などの法定福利費(給与のおおむね15%前後が目安)
  • 離職した場合の再採用コスト

これらを合算した「採用から立ち上がりまでの総コスト」で比較しないと、正確な判断はできない。

内製営業のコスト構造

正社員を1人採用し、立ち上げるまでにかかる主なコストを整理する。

費目目安
採用費(媒体・紹介手数料)数十万円〜100万円超(採用手法による)
給与(月額)経験・地域によるが月25万〜40万円程度
法定福利費給与の約15%前後
研修・OJT期間の生産性立ち上がりまで3〜6ヶ月は本来の稼働に満たない
離職時の再採用コスト上記が再度発生

給与そのものは営業代行の月額費用より低く見えても、採用コストと立ち上がり期間の機会損失を加味すると、初年度の実質コストは想像より大きくなりやすい。

営業代行のコスト構造

一方、営業代行の費用は次のように整理できる。

費目目安
固定報酬型(1名あたり月額)月50万〜70万円程度
成果報酬型(アポ・商談1件あたり)3万〜10万円程度
初期費用会社によるが、比較的抑えられる場合が多い
立ち上がり期間2〜4週間程度で稼働開始

営業代行は月額の単価だけ見ると高く感じるが、立ち上がりの早さと、成果が出なければ契約を見直せる柔軟性が、正社員採用にはないコスト面の利点になる。

総コストで比較したときの分岐点

具体的な金額感で比較すると、次のような傾向が見えてくる。

  • 短期・小規模な検証(数ヶ月〜半年程度):採用・育成にかかるコストと時間を考えると、営業代行の方が総コストを抑えやすい
  • 中長期・大規模な運用(1年以上、複数名体制):規模が大きくなるほど、正社員1人あたりの固定費が相対的に下がり、内製の方が割安になっていく分岐点が訪れる
  • 成果が不安定な段階:正社員は成果に関わらず固定費が発生し続けるため、検証段階では営業代行の成果報酬型の方がリスクを抑えられる

一般的には、案件数や必要人員が一定規模を超えたあたりから、内製の方がコスト効率で優位になっていく傾向がある。ただし、この分岐点は商材の単価や営業サイクルの長さによって大きく変わるため、自社の数字で試算することが欠かせない。

ポイント:「どちらが安いか」を一度きりの計算で終わらせず、案件数や契約規模が増えたときにどちらが有利になるかをシミュレーションしておくと、将来の意思決定がスムーズになる。

コスト以外に考慮すべき要素

コスト比較は重要な判断材料だが、それだけで決めるのは早計だ。次の要素もあわせて考えたい。

  • ノウハウの蓄積:内製は自社に知見が残るが、営業代行は契約終了とともに知見が失われやすい
  • スピード:営業代行は数週間で稼働できるが、内製は採用から立ち上がりまで数ヶ月を要する
  • 柔軟性:営業代行は繁忙期だけの一時的な増員がしやすいが、内製は人員の増減が容易ではない

コストで有利だからといって短絡的に選ぶのではなく、事業のフェーズやスピード感に応じて総合的に判断する必要がある。

試算のためのシンプルな考え方

自社での判断材料として、次の順序で試算してみることをおすすめする。

  1. 今必要な架電・商談のボリュームを見積もる
  2. 営業代行に依頼した場合の月額・成果報酬ベースでの想定費用を算出する
  3. 同じボリュームを正社員でまかなう場合の採用費・給与・立ち上がり期間中の機会損失を算出する
  4. 両者を6ヶ月・1年・2年といった時間軸で比較する

短期では営業代行が有利に見えても、時間軸を延ばすと内製の方が有利になる、というケースは珍しくない。逆に、案件数の変動が大きい事業では、固定費化する内製よりも、必要な時だけ稼働を増減できる営業代行の方が、長期で見てもコスト効率が良いこともある。自社の事業特性(安定成長型か、季節変動が大きいかなど)によって、この分岐点は変わってくる。

よくある質問

Q. 営業代行の方が高く見えますが、本当にコストは高いのですか? A. 月額の単価だけを見ると高く感じますが、正社員の採用・育成コストや立ち上がり期間の機会損失まで含めて比較すると、必ずしも営業代行の方が高いとは言えません。

Q. コスト比較はどのくらいの期間で行うべきですか? A. 6ヶ月・1年・2年など複数の時間軸で試算すると、短期と中長期で有利な選択肢が変わることが見えてきます。

Q. 併用する場合、コストはどう考えればよいですか? A. 検証段階は営業代行、成果が安定した領域は内製、というように役割を分けることで、それぞれのコスト構造の利点を活かせます。

Q. コスト試算で見落としがちな項目はありますか? A. 採用担当者の工数や、離職時の再採用コストは見落とされがちです。表面的な給与や代行費用だけで判断しないよう注意が必要です。

コストの比較は「今の金額」だけでなく「時間軸」を含めて考えることで、初めて実態に即した判断ができるようになる。