同じ製品やサービスを導入する企業でも、その動機は驚くほど多様だ。表面上は「コスト削減のため」と語られていても、実際には社内稟議を通しやすくするためだったり、特定部署の負担を軽減するためだったりする。Jobs-to-be-Done(JTBD)は、顧客が製品を「雇って」片づけたい用事(ジョブ)に着目する考え方で、この多様な動機を捉えるための視点を提供してくれる。

JTBDの基本的な考え方

JTBDでは、顧客は製品そのものが欲しいのではなく、ある状況下で果たしたい進歩や解決したい用事のために製品を選ぶと捉える。同じ製品でも顧客ごとにジョブが異なれば、訴求すべきポイントも変わってくるという発想だ。

観点従来の顧客理解JTBD的な捉え方
対象属性・業種で分類状況・ジョブで分類
問い何が欲しいか何を片づけたいか
競合同業他社の製品ジョブを満たす代替手段全般

ポイント:JTBDの競合は同業他社だけではない。社内で我慢して対応する、Excelで代替するなど「何もしない」も含めた選択肢と比較されている点を意識したい。

商談での活用方法

  • 「なぜ今このタイミングで検討しているのか」を丁寧に聞く
  • 過去にどんな代替手段を試し、なぜ不十分だったのかを確認する
  • ジョブが明確になったら、提案の訴求軸をそのジョブに合わせて調整する

こうした問いを重ねることで、価格や機能一覧だけでは見えない導入の背景が浮かび上がってくるだろう。特に稟議を通す担当者と実際の利用者でジョブが異なる場合、双方に向けた説明を用意する必要が出てくる。

適用時の注意点

JTBDはインタビューに時間がかかる手法であり、短時間の商談すべてに適用するのは現実的ではないかもしれない。重要度の高い商談やアップセルの機会に絞って深掘りする運用が実務的とされる。

よくある質問

Q. JTBDのヒアリングはどのくらいの時間を要するか A. 案件の規模にもよるが、初回のみでは把握しきれず複数回に分けて深掘りすることが多いとされる。

Q. ジョブが複数ある顧客にはどう対応するか A. 意思決定に最も影響するジョブを一つ特定し、それを軸に提案を組み立てる方が焦点が定まりやすい。

Q. JTBDと従来のペルソナ設計は併用できるか A. ペルソナで属性を、JTBDで動機を補う形の併用は一般的な運用とされる。

Q. 社内共有する際の注意点は A. ジョブは顧客の発言そのままではなく、背景にある意図として言語化し直すと社内の共通理解が進みやすい。